ブレッソンが死ぬ直前に発売されたある意味グッドタイミングというか、因縁じみた写真集である。近年カメラをバックに入れたまま絵を描いていたため、彼の写真集は国内ではほとんど発売されていなかった。そのため比較的新しい図書館には彼の写真集はなかなか置いていない。海外でおこなわれた「ブレッソンとはなにものだ?」という展示会に作られたものを、日本語版に再編集された本書は、ブレッソンの写真集をほしかったものにとっては、質、量、情報ともに申し分ないものとなっている。今まで撮ってきた、彼の言う数々の決定的瞬間が多く納められ、永い間マスコミから避けていたプライベートな部分まで踏み込んだ内容になっている。最初で最後の60ミニッツのインタビューの中でも「死」を感じる発言があり、ここまで掲載しているとこを見ると、死を感じていたことを予感させる。数々の賞を断ったブレッソンは自分の業績を話すこともしない。そういう考え方が間違っているという。決定的瞬間という有名な言葉について、彼はこう答えている。「常に動いている世の中を、我々は受動的に見ているだけで、唯一何かを想像する時間といえば、シャッターを切ることでその動きを止める1/125秒だけだ。」と。